スズ Sn
スズの性状、必須性、吸収・代謝・排泄、体内分布、毒性
■ 第4章 「スズ」 荒川泰昭:「ミネラルの科学と最新応用技術」 第5編 特殊ミネラルの機能(シーエムシー出版) 東京 2008年
スズ Sn(英:tin、独:Zinn、仏:etain、中:錫)
1 性状
スズ(tin、=stannum)は元素記号;Sn、原子番号:50、周期律表:第IV族aに属す、原子量:118.69、電子配置:1s22s22s63s23p63d104s24p64d105s25p2、同位元素:108Sn〜128Snの21種のほか、113mSnなど7種の核異性体があり合計28種、同位体存在比:118Sn:24.0%、116Sn:14.3%、119Sn:8.6%、117Sn:7.6%、124Sn:5.9%、122Sn:4.7% 以下略、比重:7.28、融点:232℃、原子価:2価(第1スズ)、4価(第2スズ)、性質:銀白色の金属で酸にもアルカリにも溶ける.展延性が大きく、薄い箔(スズ箔)になる.温度による変態があり、α-スズは13.2℃ 以下、β-スズは13.2-161 ℃、γ-スズは161℃ 以上。
とくに、α-スズは13.2℃ 以下で金属スズから非金属型の灰色スズに転移し、粉砕するが、この現象は“スズペスト”と呼ばれ、1850年ロシアの大寒波継続時におけるパイプオルガンの崩壊や1912年スコット大佐の南極探検隊員の燃料缶の破壊による全滅など、過去におけるさまざまな大惨事の誘発原因とされている。スズには金属スズのほかに、無機スズと有機スズがある。
無機スズには酸化物(SnO、SnO2等)、硫化物(SnS、SnS2等)、塩化物(SnCl2、SnCl4等)、無機酸塩(SnSO4等)、有機酸塩[(CH3COO)2Sn等]などがある。
酸化状態:Sn2+およびSn4+の形として存在する。
酸化還元電位:Sn2+ + 2e- ➝ Sn Eo = -0.14V
Sn4+ + 2e- ➝ Sn2+ Eo = +0.15V
有機スズはスズと炭素がσ結合(Sn−C)で結ばれる共有結合性化合物であり、一般にRnSnX4−n(n=1〜4)の化学式で示され、RSnX3、R2SnX2、R3SnX、R4Sn(R=アルキルまたはアリル基、X=ハロゲン、オキサイド、水酸基または他の一価の陰イオン)の4つの型が存在する。スズ原子と結合しうる有機の原子団は多数であり、現在までに数千種の有機スズ化合物が合成されている。その組み合わせにより無数と言えるほど多くの化合物の存在が考えられ、それらの特性は多種多様である。
2 元素名の由来
元素名はアングロサクソン語のtinに由来し、元素記号Snはラテン語stannumに由来する。Stannumは紀元後4世紀頃よりスズに対して用いられている。
3 元素発見の歴史
紀元前3000年頃より青銅(スズと銅の合金)として中近東地域で使用されており、スズ製品としてはエジプト第18王朝(1580-1350B.C.)の墓より発掘されたものが最古である。紀元前1000年頃にはイギリスのコーンウオールで盛んに採掘されており、紀元前1600年頃より始まる中国・殷の青銅器には多量のスズが含まれている。
4 地球上の濃度
宇宙レベルでは、スズの量はシリコンの106原子あたり1.33〜4.2原子であると計算されている。隕石中のスズの分析はごく最近のことであるが、アイソトープ希釈法(マススペクトロメトリー)による分析では鉄隕石:0-20ppm、石状鉄隕石:1-0.8ppm、球粒隕石:0.02-2.4ppm、黒色ガラス質隕石(テクタイト):0.77-0.95ppm、月岩石:0.19-1.2ppm、月土壌:0.7ppmである。
スズを含む鉱石は比較的少なく、適当量含むものとして25鉱石がリストアップされるが、最も主なものはカシテライト:スズ石(tinstone)、酸化スズ(スズの原鉱)SnOであり、他にはSnS2、CaSn(8O3)2、BaSn(Si3O9)、CaSn(Si3O9)・2H2O、CuFeSnS4、Cu2(Zn0.77Fe0.23)SnS4、SnS、PbSnS2、Cu12(As,Sn,V)4S13などがある。スズの採鉱はマレーシア、タイ、中国、オーストラリア、ボリビアが主である。
標準的な岩石におけるスズ含量は一般的に生命維持に必要な栄養素であるSe、I、Co(時々B、Mo)量よりもずっと高く、その量の変動幅は大きい。7つの異なった雲母中のスズ濃度は3.31-1166ppmであった。一般的な岩石中のスズ濃度は、火成岩:2.49ppm、珪酸岩:3.9-4.0ppm、泥板岩:3.5-4.2ppm、堆積岩:0-80ppm、片麻岩:800-8000ppmである。
海水中のスズ含量は海域的にも広範囲に変動する。無機スズとして、0.18ppb、0.008-0.033ppb、<5ppm、0.3-62ppm、0.3-1.22ppb、2.5ppm、1.8ppb、0.02ppb、2.2-3.9ppb、50.1ppb、2.1-38ppb、0-0.57ppb、1-4ppbなどが報告されている。また、港湾部の海水では比較的高く、2.2-3.9ppb、50.1ppb、2.1-38ppb、0-0.57ppb、1-4ppbなどである。淡水中のスズ濃度においても同様に広範囲に変動する。
5 必須性
スズは生体中に存在する4 族の微量元素であるが、1970年Schwarz ら(1)は幼若ラットをスズ欠乏にすると重篤な成長異常、発育阻害、脱毛、脂漏症、脱力、毒性などが誘発され、しかもこれらの症状が有機スズあるいは無機スズの投与によって回復することから、スズがラットの成長や発達に必須の元素であり、これは人へも外挿できると結論づけた(1)。しかし、その後この仕事は錫が未知の機能をもった必須微量元素であると引用はされるものの、未だ分子レベルでの存在形態や機能については充分に確認されていない。
6 吸収・代謝・排泄
スズの1日摂取量についてはいくつかの報告があるが、2,400 カロリー程度の新鮮な肉類、穀類、野菜からなる正常食を摂るとしてだいたい1〜4 mg である(2)。スズの1日必要量については未だ不明であるが、スズの生理学的な摂取における代謝についてはいくらかのデータがある。それによると外来スズの生体への吸収と貯留は非常にわずかであり、主として糞尿中に排泄される。例えば、摂取されたスズの89〜92 %が糞便に、5.5〜6.2 %が尿に排泄され、残りの約 2 %が体内に貯留されるという報告(3)やアメリカ成人の1日のスズバランスを摂取量4.003 mg に対して、排泄量を糞に 3.98 mg(99.4 %)、尿に 0.023 mg(0.6 %)の合計4.003 mg とする報告4)などがある。
また、無機スズの生体内生物学的半減期は26〜29 日である(4,5)。
ちなみに有機錫の場合はその種類によって異なるが、腸管からの吸収率はおよそ25〜30 %程度であり、生物学的半減期はトリブチル錫で4 日前後(5)、トリフェニル錫で10 日前後(6)と一般に無機錫に比べて短い。また、113Sn 標識有機錫を用いた代謝実験ではトリフェニル錫の場合(7)、1 週間以内に90 %以上が排泄され、糞へは88 %、尿へは3 %であり、またトリシクロヘキシル錫では10 日以内に100 %が排泄され、糞中へ97.5 %、尿中へ1.8〜2.5 %であったと報告されている。
7 体内および組織内分布
生体内のスズはSn2+およびSn4+の形で存在するが、その存在形態は不明である。スズの生体内分布については1930 年代頃より数多くの報告があるが、検体の生活環境や測定法の違いなどによりその値のバラツキは大きい。スズはヒト組織中にはかなりの量で存在しており、生体中にみつかる30 余りの金属元素の中では濃度で比較すると銅、ニッケル、コバルト、その他既知の必須元素よりも多く、8 番目にランクされる(4)。
ヒト組織中のスズレベルは地理学的地域、年齢、性ではなく、主に摂取食物中のスズ量に依存して変動するが、特に缶詰食品からの混入物によって大きく影響される。しかし、そのスズの特定の源泉については充分に知られていない。
ヒト組織中のおおよそのスズ濃度(灰化濃度:ppm)は、脳:0.06、気管:6.08、食道:4.55、甲状腺:2.3-3.2、心臓:1.64、肺:1.2、副腎:2.5-3.6、脾臓:1.7-2.4、膵臓:1.75、肝臓:6.5-9.6、腎臓:5-5.5、胃:3.5-4.3、横隔膜:1.76、小腸:30、大腸:9、直腸:1.5-4.2、精巣:1.87、卵巣:5.4、子宮:2.2、血液:0.005-4.7である。
8 臓器特異性
体内に吸収されたスズは主に骨に蓄積し、骨形成の阻害や骨の脆弱化の原因となる。最近、Cardarelli ら(8)は胸腺がスズの主な貯蔵庫であり、スズは胸腺内で癌細胞に作用する循環性のスズステロイドに作り替えられ、スズ−胸腺−抗癌なる軸の存在のもとに、亜鉛との相乗あるいは拮抗により発癌に対する生体防御に重要な機能を果たしているという仮説を提唱した。しかし、この仮説もヒトを含め他の動物一般に適用できるかどうかは未だ確認されていない。われわれの追試では、一般動物における胸腺中のスズが極めて微量(現在の方法論では検出限界に近い)であり、これがこの仮説の支持を妨げている。
9 毒性
9・1 金属スズ
金属スズ 30-50mg/kg 添加飼料で飼育したネコ、ウサギ、ネズミは年余にわたり健常であったという報告やウサギに 6-10日間、毎日1g の大量を摂取させて死亡させた報告などがあるが、金属スズの経口毒性は低く、大量の経口摂取で嘔吐を惹起する程度である。
9・2 無機スズ
無機スズでは19 世紀の初め、Orfila(9)が塩化スズや酸化スズの毒性を記述したのが最初であるが、19世紀後半より20世紀初頭にかけて缶詰食品のスズ汚染に関する興味から無機スズの毒性に対して著しい関心が払われた。
無機スズの経口毒性は金属スズに比べればかなり強く、塩化第一スズの致死量を 4-6g とする報告がある。また、酸化スズの長期吸引は無症状性の良性塵肺症を生じるとする報告もある。しかし、その後の研究では 730ppm の過剰摂取でも消化器系への刺激のみで全身性の毒性や後遺症は生じないことから、哺乳動物にとっては本質的に無毒であると結論づけられている。
9・3 有機スズ
有機スズの生理活性は対象となる生物によってかなり異なる。昆虫、カビ、細菌、藻類などの下等動物に対しては、活性の強さの順にトリ型(R3SnX)>テトラ型(R4Sn)、ジ型(R2SnX2)>> モノ型(RSnX3)である。このとき、Rがアルキル基の場合、C3(プロピル基)、C4 (ブチル基)のものが最強で、炭素数がこれより少なく、あるいは多くなるほど活性は急激に減少する。
一方、哺乳動物に対する毒性は下等動物の場合と同様に、一般的には R3SnX>>>R4Sn>R2SnX2>RSnX3の順であり、アルキルスズ>アリルスズ、アルキルスズでは炭素鎖の短いもの>長いもの、の傾向が見られる。下等動物と違う点はトリ型(R3SnX)ではC1(メチル基)、C2(エチル基)のものが最強で、炭素数がこれより大きくなるに従い毒性は急激に減少する。これは経口的暴露の場合に限ったもので、腸管での吸収率を反映したものである。X基は生理活性そのものにはほとんど無関係であるが、その化合物の物性、例えば溶解性、揮発性、湿潤性などに大きく関係する。従って、製剤としての性状すなわち薬物としての効果に重大な影響をもっている。
10 生理作用
無機スズによる胃酸分泌の低下、小腸粘膜酵素であるアルカリホスファターゼ活性の阻害、Caの腸管からの吸収の低下、胆汁中へのCa排泄の増加などが観察されており、これがスズの過剰摂取による嘔吐や下痢の原因となっているものと思われる。この他に、腎皮質におけるCaの増加やCa結合タンパク質の結合活性の上昇、ヘム代謝におけるδ−アミノレブリン酸脱水酵素の活性阻害などが観察される。
11 欠乏症
スズ欠乏実験により重篤な成長異常、発育阻害、脱毛、脂漏症、脱力、毒性などが生じることから、成長や発育におけるスズの必須性が唱えられている@。しかし、この必須性もそれに関する分子レベルでの存在形態や機能(未知の機能も含めて)、さらにはヒトへの外挿性などについては未だ充分に確認されていない。
12 過剰症(中毒症)
12・1 金属スズ
金属スズの経口毒性は低く、大量の経口摂取で嘔吐を惹起する。
12・2 無機スズ
個人差があるが食品中含量200-300ppmで嘔吐、嘔気、腹痛など胃腸症状を惹き起こす。pH3という酸性のフルーツポンチの缶詰中スズ含量2000ppmで重篤な胃腸障害発生の記録がある。ちなみに、経気道毒性では酸化スズの長期吸引により無症状性の良性塵肺症の発生事例がある(10)。無機スズは血液−脳関門、血液−胎盤関門を通過しない。
12・3 有機スズ
1)モノアルキルスズ:他のアルキルスズに比し、低毒性で目立った知見なし。
2)ジアルキルスズ:標的臓器は胸腺、胆管である。最も特徴的な症状は微量暴露で胸腺萎縮ならびにT細胞性免疫機能低下が誘発されることであるが、高濃度暴露では胆管炎症や肝の壊死性障害も発現する。ジブチルスズ、ジオクチルスズのようなジアルキルスズは胸腺ならびに胸腺依存性部位を選択的に萎縮させ、T細胞依存性の免疫機能を抑制する。しかし、このジアルキルスズによる胸腺萎縮は一過性であり、連続暴露において回復する。即ち、細胞死抑制因子の発現により耐性が発現する。胸腺萎縮誘発の程度はジブチルスズ、ジオクチルスズ>トリブチルスズ>トリフェニルスズの順であり、かつこの萎縮はこれら物質がもつ他の酸化的リン酸化反応の抑制や脳浮腫よりも鋭敏である。
発症機序としては、(1)胸腺萎縮に関してはカスパーゼ非依存性の細胞死(細胞消失:主としてネクロシス)が主であり、有機スズの細胞膜や核ではなく、ゴルジ体や小胞体領域への集積によるリン脂質代謝系の阻害、細胞膜物性の無秩序化と膜酵素の不活性化、膜情報伝達系の異常によるDNA合成阻害、細胞増殖抑制による細胞死の系が考えられ、また(2)免疫機能の低下に関しては胸腺ホルモンの活性低下などによる胸腺Tリンパ球の分化、成熟過程の異常と免疫応答系の混乱が考えられる。
3)トリアルキルスズ:標的臓器は脳、中枢神経系である。最も特徴的な症状は中枢神経系白質のミエリン内の浮腫に基づく中枢神経症状、海馬Zn2+の消失など海馬変性に伴う学習記憶障害、嗅球Ca2+の過剰蓄積による嗅覚障害などである。一般的には(1)初期では脳震盪に類似、強度の頭痛、吐気、嘔吐、食欲不振、体重減少、(2)確立期では四肢の脱力、麻痺、全身の振戦、脳圧亢進症状、脳白質の間質性浮腫、精神障害、乳頭浮腫、痙攣、昏睡、死亡などが見られる。トリアルキルスズはこの他、胸腺萎縮による免疫不全や精巣萎縮(間質組織の脱落)によるテストステロン分泌抑制などを誘発する。胸腺萎縮はジブチルスズに比べ弱いが、不可逆性である。
発症要因としては、組織により異なるが、(1)膜の構造変化や破壊あるいは膜物性の無秩序化による膜介在情報伝達系の異常および(2)特定微量元素の過剰蓄積による細胞死の誘導が考えられる。即ち、免疫細胞に対しては、ミトコンドリア介在のFas/FasL、膜電位変化、Cytochrome C、Bid、CAD、ICAD、カスパーゼカスケード(Caspase 3, 8, 9 およびそのインヒビター)などのカスパーゼ依存性のアポトーシスを誘導する。海馬神経系細胞に対しては、海馬へのFe3+、Cu2+など遷移元素の蓄積による酸化ストレスを介するアポトーシスを誘導する。また、嗅覚系細胞に対しては、Ca2+過剰蓄積を介する小胞体ストレス系のアポトーシスを誘導する。有機スズは細胞膜や核ではなく、ゴルジ体や小胞体領域へ集積し、それら器官の構造や機能を破壊し、それに伴う細胞内リン脂質輸送系の阻害などによるリン脂質代謝系を阻害する。さらに、これが細胞膜物性の無秩序化と膜酵素の不活性化、それに伴う膜介在の情報伝達系の異常による細胞死やFasリガンドを介する系やCa2+蓄積を介する系、あるいはFe3+、Cu2+など遷移元素の蓄積による酸化ストレスを介する系によるエンドヌクレアーゼ活性化に伴う細胞死(主としてアポトーシス)を誘導する。
4)テトラアルキルスズ:自体の毒性は低く、主として生体内脱アルキル化によりトリ体となり、トリアルキルスズとしての作用を発現する。
5)トリフェニルスズ:消化管系の炎症、肝の病変、免疫抑制、リンパ球の著しい減少などが見られる。
13 スズを多く含む食品と濃度
食品中のスズ含量は他の食品に比べ、缶詰食品(特に野菜や果物)において極端に高い。しかも、ラッカー二重塗装缶では 40ppm 以下であるが、非塗装缶ではおおむね 100ppm 以内となり、内容物が酸性の場合は 300-800ppm と極端に高くなる。一例として、野菜や果物のラッカー二重塗装缶中のスズ含量はアスパラガス38.6ppm、トマト29.4ppm、ピーチ16.6ppmなどである。また、海水中には微量(約3ppb)のスズが含まれており、海産食品の中でも特にカキ、たらなどに濃縮されている。魚介類ではカキが最も多含で0.6ppm である(単位:湿重量当たり)。缶詰以外の植物性や動物性の自然食品にもスズは含まれているが、これらの含量は食物連鎖等を考えるとそれぞれが生育した土壌、河川水、肥料や海水など生活環境中のスズ含量を反映している。
14 有機スズの用途・汚染経路・汚染状況
近年、急速に増大しつつあるスズ生産量の約10〜20%が有機スズ化合物として環境中に産出されている。産業界ではジブチルスズ、ジオクチルスズ、ジメチルスズなどのジアルキルスズがポリ塩化ビニル(PVC)などハロゲン含有樹脂用の安定剤として多用され、また、トリブチルスズ、トリフェニルスズ、トリシクロヘキシルスズなどのトリアルキルスズは、昆虫、真菌、細菌、藻類などに対して有力な生物学的活性があるとして、農用殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺軟体動物剤(淡水産巻貝など寄生虫の中間寄生宿主に対して)、鶏用駆虫剤、木材防腐剤、製紙工場でのスライム生成防止剤、塗料の防カビ剤、船底防汚剤、病院などの消毒剤などに広範に頻用されている。
最近、藻や貝類の付着防止のために船底塗料や養殖用漁網防汚剤に混ぜたトリブチルスズやトリフェニルスズによる海洋汚染が世界的規模で問題となっている。 本件は1985年、著者らと米国商務省・標準局(NBS)や米国海軍研究所との研究協力に端を発したものであるが、その後問題はますます重大化し、魚介類や鳥類への汚染から食物連鎖によるヒトへの汚染が懸念されている。また、本件は現在注目されている海洋生物の生態系の撹乱など、内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問題の発端でもある。
15 医薬品
歯科用アマルガム、虫歯予防のフッ化スズなどが歯科用に使われているが、現在、新生児黄疸の予防にdichloro(protoporphyrin \)tin(W)、抗がん剤として有機スズ化合物が有効であることが解り、注目されている.
16 ヒトにおける典型的な(集団)中毒事例
16・1 無機スズ
pH 3.0という酸性のフルーツポンチの缶詰(スズ含量:2000ppm)で重症胃腸障害発生の記録がある。缶詰内容液が酸性の場合は果汁に含まれているクエン酸や酒石酸のような弱い有機酸によっても接触している時間に比例してスズが溶出し、クエン酸スズのような無機スズ化合物となり、ある程度以上の濃度(200-300ppm以上)になれば胃腸症状(嘔吐、嘔気、腹痛など)を惹き起こすことになる。
16・2 有機スズ
現在までに報告されているヒトにおける有機スズの典型的中毒事例はほとんどが職業上あるいは医薬品として大量暴露した場合の急性中毒であり、有機スズ汚染食品などからの中毒例は今のところ明確でない。しかし、たとえ微量ではあっても前述の海洋汚染の如く食物連鎖から長期にわたって暴露し、生体濃縮している(潜行型環境汚染の)危険性は十分にある。
外国における古い事例としては実験者が自ら暴露した事例で、トリエチルスズ合成中のヒューム吸引による中毒である(White,1880)。激しい頭痛、嘔気、全身衰弱、下痢、蛋白尿を主訴とした。
最も有名な集団中毒事例は1954年、フランスで起こったスタリノン中毒事件である(11)。スタリノンは皮膚化膿症、にきび、骨髄炎などの細菌感染症に有効な治療薬として頻用された有機スズ製剤で、1カプセル中に15mgのジエチルスズジアイオダイドと賦形剤として100mgのリノールを含む製剤であるが、この中にジエチルスズ量の10% 程度のトリエチルスズアイオダイドが不純物として混入しており、これが中毒の主な原因物質と推定されている。約1000人が服薬し、217人が発病、そのうち110人が死亡した。症状は内服 4日目頃より強い頭痛、嘔気、嘔吐で始まり、一過性の四肢麻痺や視力障害、脳浮腫による頭蓋内圧亢進などを伴う。重症例では意識混濁、痙攣から昏睡状態となり死亡する。110人の死亡者の剖検の結果では脳白質や髄膜に著明な浮腫が認められた。これらの諸症状は動物実験で得たトリエチルスズによる症状と全く同じであった。
他の典型例として、日本における労働災害の事例がある。その1つは10年来、有機スズの製造研究に従事してきた労働者で、頭痛、嘔吐を主訴とし、脳浮腫、脳圧亢進、うっ血乳頭、中等度の乳頭浮腫などのトリアルキルスズ中毒症状や、胆管上皮の変性、肝障害などのジアルキルスズ中毒症状など、動物実験での症状と同様の症状を訴えた。患者の生体試料から高値のスズが検出された。ジアルキルスズの排泄促進治療にBAL、脳浮腫に対しては高張ブドウ糖、チオクト酸、メタボラーゼ、脳圧亢進に対しては尿素、髄圧正常化に間けつ的腰椎穿刺などを施行し、約 6ケ月で脳圧亢進症状の改善をみた。
この他にも、塩化ビニル安定剤の製造に携わる作業者に上気道刺激症状および肝機能障害(1956年)、皮膚障害(1961年)、びらん性表層性角膜炎(1957年)、ブチルスズ合成工に強度の嗅覚障害(1959年)など職業上の中毒事例が報告年されている。
ちなみに、無機スズの場合、ほとんど無毒であるが、ある程度以上の濃度(200-300ppm以上)になれば胃腸症状(嘔吐、嘔気、腹痛など)を惹き起こす。
17 元素の定量法
17・1 検査材料
食品衛生においては水や各種食品から食品用器具・容器包装類に至るまで検査に供する試料の材質は多種多様であり、スズ、有機スズの含有量や用いる分析法の感度なども異なるため、試料の量や調整法は適宜調節する必要がある。
17・2 分析
無機スズの分析については1)SATP(salicylidenamino-2-thiophenol)のスズ錯体が黄色を呈し、キシレンに抽出されることに基づくSATP法、2)ヘマテイン試液による呈色を560nmで吸光度測定するヘマテイン法、3)スズを水素化ホウ素ナトリウム溶液を用いて水素化合物に変換し、原子吸光光度法で測定する水素化物変換ー原子吸光光度法などが食品衛生の領域で推奨されているが、詳細については食品衛生検査指針ー理化学編ー(厚生省生活衛生局監修、社団法人 日本食品衛生協会発行)、1991年、p.201-203を参照されたい。なお、規格基準として清涼飲料水の場合はスズ含量は150.0ppmを超えてはならない。
有機スズの分析については、著者の分析法を参照されたい(12-16)。
18.予防対策
有機スズ化合物については通産省、厚生労働省あるいは環境庁が所管する種々の法律によってその取り扱いや残留基準などが規制されている。
18・1 取り扱い規制
1)トリブチルスズオキサイド(TBTO)は通産省、厚生労働省および環境庁が所管している「化学物質の審査および製造等に関する法律(化審法)」において第一種特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が禁止されている(1990年1月6日より施行)。その他のトリブチルスズの13化合物は当初、製造、輸入量の事後届け出が必要な「指定化学物質」となっていたが、その後、事前届け出が必要な「第二種特定化学物質」に指定された。
2)トリフェニルスズの7化合物は同法において「第二種特定化学物質」に指定され、製造、輸入量の事前届け出が必要で、かつ製造、輸入が必要に応じて制限されている(1990年1月6日施行)。
3)現在、同法に基づいて作業環境の管理、ならびに作業者の健康管理、衛生教育の実施が行政指導されている。
18・2 残留規制
1)食品衛生法の食品・食品添加物等規格基準(以下、規格基準)において、酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズが農薬として残留基準を定められている。また、器具・容器包装についての規格基準では飲食器、割烹具に対してジブチルスズ化合物の基準が定められている。
2)農薬取締法の登録保留基準にも酸化フェンブタスズの基準が定められている。ちなみに、従来より農薬として頻用されていた数種のトリフェニルスズは1990年9月に農薬登録から抹消され(失効)、その使用は禁止されている。
18・3 一日許容摂取量(ADI)
厚生労働省は有機スズ化合物(特に魚肉汚染で問題となっている物質)の安全性評価ならびに試験法に関する通達(1985.4.26付衛乳第18号、1994.2.25付衛乳第20号)の中で、わが国独自の一日許容摂取量をトリブチルスズオキサイドについては1.6μg/kg/日、トリフェニルスズについては0.5μg/kg/日と設定している。しかし、これらの物質についても規格基準は定められていない。
18・4 外国基準
FAO/WHO合同残留農薬部会設定の国際基準や米国連邦規則(CFR:Code of Federal Regulation)の許容基準などでは酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズの他に、トリフェニルスズの塩化物、酢酸塩、水酸化物などが規制されている。
19 関連の著書、総説
1)Y. Arakawa, Chemistry of Tin, Chapter 10: Recent studies on the mode of biological action of the di- and tri-alkyltin compounds, p.388-428, Blackie Academic & Professional, Chapman & Hall, Glasgow, U.K (1998)
2)Y. Arakawa, Main Group Elements and Their Compounds, p.422-445, Narosa Publishing House, New Dehli, India (1996)
3)Arakawa Y. Tin and Immunity. −Review−. Biomed. Res. Trace Elements, 6(2),1−34 (1995)
4)Y. Arakawa et al. Metal Ions in Biological Systems, Volume 29; Chapter 4: Biological properties of alkyltin compounds, p.101−136, Marcel Dekker, Inc. New York (1993)
5)Y. Arakawa, Chemistry and Technology of Silicon and Tin, Chapter 23: p.319−333, Oxford University Press, Oxford (1992)
6)Y. Arakawa et al. Tin and Malignant Cell Growth, Chapter 9: p.83−106, CRC Press, Boca Raton, Florida (1988)
7)荒川泰昭、「食中毒予防必携」第2版、5.化学物質等による食中毒−スズ、有機スズ.p361-378、厚生省生活衛生局、日本食品衛生協会、東京、(2007)
8)荒川泰昭、「生命元素事典」第2章 2.必須微量元素−スズ、p126-130、オーム社、東京、(2006)
9)荒川泰昭、「予防医学事典」F.環境・134.有機スズ、p307-309、朝倉書店、東京、(2005)
10)荒川泰昭、特集「微量元素と健康」―癌免疫と微量元素―(総説)Biomed.Res.Trace Elements 15(4),317-325 (2004)
11)荒川泰昭、トピックス「免疫機能における微量元素の栄養と毒」―金属による胸腺免疫の病的老化―(総説)Biomed.Res.Trace Elements 14(4),249-258 (2003)
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1 性状
スズ(tin、=stannum)は元素記号;Sn、原子番号:50、周期律表:第IV族aに属す、原子量:118.69、電子配置:1s22s22s63s23p63d104s24p64d105s25p2、同位元素:108Sn〜128Snの21種のほか、113mSnなど7種の核異性体があり合計28種、同位体存在比:118Sn:24.0%、116Sn:14.3%、119Sn:8.6%、117Sn:7.6%、124Sn:5.9%、122Sn:4.7% 以下略、比重:7.28、融点:232℃、原子価:2価(第1スズ)、4価(第2スズ)、性質:銀白色の金属で酸にもアルカリにも溶ける.展延性が大きく、薄い箔(スズ箔)になる.温度による変態があり、α-スズは13.2℃ 以下、β-スズは13.2-161 ℃、γ-スズは161℃ 以上。
とくに、α-スズは13.2℃ 以下で金属スズから非金属型の灰色スズに転移し、粉砕するが、この現象は“スズペスト”と呼ばれ、1850年ロシアの大寒波継続時におけるパイプオルガンの崩壊や1912年スコット大佐の南極探検隊員の燃料缶の破壊による全滅など、過去におけるさまざまな大惨事の誘発原因とされている。スズには金属スズのほかに、無機スズと有機スズがある。
無機スズには酸化物(SnO、SnO2等)、硫化物(SnS、SnS2等)、塩化物(SnCl2、SnCl4等)、無機酸塩(SnSO4等)、有機酸塩[(CH3COO)2Sn等]などがある。
酸化状態:Sn2+およびSn4+の形として存在する。
酸化還元電位:Sn2+ + 2e- ➝ Sn Eo = -0.14V
Sn4+ + 2e- ➝ Sn2+ Eo = +0.15V
有機スズはスズと炭素がσ結合(Sn−C)で結ばれる共有結合性化合物であり、一般にRnSnX4−n(n=1〜4)の化学式で示され、RSnX3、R2SnX2、R3SnX、R4Sn(R=アルキルまたはアリル基、X=ハロゲン、オキサイド、水酸基または他の一価の陰イオン)の4つの型が存在する。スズ原子と結合しうる有機の原子団は多数であり、現在までに数千種の有機スズ化合物が合成されている。その組み合わせにより無数と言えるほど多くの化合物の存在が考えられ、それらの特性は多種多様である。
2 元素名の由来
元素名はアングロサクソン語のtinに由来し、元素記号Snはラテン語stannumに由来する。Stannumは紀元後4世紀頃よりスズに対して用いられている。
3 元素発見の歴史
紀元前3000年頃より青銅(スズと銅の合金)として中近東地域で使用されており、スズ製品としてはエジプト第18王朝(1580-1350B.C.)の墓より発掘されたものが最古である。紀元前1000年頃にはイギリスのコーンウオールで盛んに採掘されており、紀元前1600年頃より始まる中国・殷の青銅器には多量のスズが含まれている。
4 地球上の濃度
宇宙レベルでは、スズの量はシリコンの106原子あたり1.33〜4.2原子であると計算されている。隕石中のスズの分析はごく最近のことであるが、アイソトープ希釈法(マススペクトロメトリー)による分析では鉄隕石:0-20ppm、石状鉄隕石:1-0.8ppm、球粒隕石:0.02-2.4ppm、黒色ガラス質隕石(テクタイト):0.77-0.95ppm、月岩石:0.19-1.2ppm、月土壌:0.7ppmである。
スズを含む鉱石は比較的少なく、適当量含むものとして25鉱石がリストアップされるが、最も主なものはカシテライト:スズ石(tinstone)、酸化スズ(スズの原鉱)SnOであり、他にはSnS2、CaSn(8O3)2、BaSn(Si3O9)、CaSn(Si3O9)・2H2O、CuFeSnS4、Cu2(Zn0.77Fe0.23)SnS4、SnS、PbSnS2、Cu12(As,Sn,V)4S13などがある。スズの採鉱はマレーシア、タイ、中国、オーストラリア、ボリビアが主である。
標準的な岩石におけるスズ含量は一般的に生命維持に必要な栄養素であるSe、I、Co(時々B、Mo)量よりもずっと高く、その量の変動幅は大きい。7つの異なった雲母中のスズ濃度は3.31-1166ppmであった。一般的な岩石中のスズ濃度は、火成岩:2.49ppm、珪酸岩:3.9-4.0ppm、泥板岩:3.5-4.2ppm、堆積岩:0-80ppm、片麻岩:800-8000ppmである。
海水中のスズ含量は海域的にも広範囲に変動する。無機スズとして、0.18ppb、0.008-0.033ppb、<5ppm、0.3-62ppm、0.3-1.22ppb、2.5ppm、1.8ppb、0.02ppb、2.2-3.9ppb、50.1ppb、2.1-38ppb、0-0.57ppb、1-4ppbなどが報告されている。また、港湾部の海水では比較的高く、2.2-3.9ppb、50.1ppb、2.1-38ppb、0-0.57ppb、1-4ppbなどである。淡水中のスズ濃度においても同様に広範囲に変動する。
5 必須性
スズは生体中に存在する4 族の微量元素であるが、1970年Schwarz ら(1)は幼若ラットをスズ欠乏にすると重篤な成長異常、発育阻害、脱毛、脂漏症、脱力、毒性などが誘発され、しかもこれらの症状が有機スズあるいは無機スズの投与によって回復することから、スズがラットの成長や発達に必須の元素であり、これは人へも外挿できると結論づけた(1)。しかし、その後この仕事は錫が未知の機能をもった必須微量元素であると引用はされるものの、未だ分子レベルでの存在形態や機能については充分に確認されていない。
6 吸収・代謝・排泄
スズの1日摂取量についてはいくつかの報告があるが、2,400 カロリー程度の新鮮な肉類、穀類、野菜からなる正常食を摂るとしてだいたい1〜4 mg である(2)。スズの1日必要量については未だ不明であるが、スズの生理学的な摂取における代謝についてはいくらかのデータがある。それによると外来スズの生体への吸収と貯留は非常にわずかであり、主として糞尿中に排泄される。例えば、摂取されたスズの89〜92 %が糞便に、5.5〜6.2 %が尿に排泄され、残りの約 2 %が体内に貯留されるという報告(3)やアメリカ成人の1日のスズバランスを摂取量4.003 mg に対して、排泄量を糞に 3.98 mg(99.4 %)、尿に 0.023 mg(0.6 %)の合計4.003 mg とする報告4)などがある。
また、無機スズの生体内生物学的半減期は26〜29 日である(4,5)。
ちなみに有機錫の場合はその種類によって異なるが、腸管からの吸収率はおよそ25〜30 %程度であり、生物学的半減期はトリブチル錫で4 日前後(5)、トリフェニル錫で10 日前後(6)と一般に無機錫に比べて短い。また、113Sn 標識有機錫を用いた代謝実験ではトリフェニル錫の場合(7)、1 週間以内に90 %以上が排泄され、糞へは88 %、尿へは3 %であり、またトリシクロヘキシル錫では10 日以内に100 %が排泄され、糞中へ97.5 %、尿中へ1.8〜2.5 %であったと報告されている。
7 体内および組織内分布
生体内のスズはSn2+およびSn4+の形で存在するが、その存在形態は不明である。スズの生体内分布については1930 年代頃より数多くの報告があるが、検体の生活環境や測定法の違いなどによりその値のバラツキは大きい。スズはヒト組織中にはかなりの量で存在しており、生体中にみつかる30 余りの金属元素の中では濃度で比較すると銅、ニッケル、コバルト、その他既知の必須元素よりも多く、8 番目にランクされる(4)。
ヒト組織中のスズレベルは地理学的地域、年齢、性ではなく、主に摂取食物中のスズ量に依存して変動するが、特に缶詰食品からの混入物によって大きく影響される。しかし、そのスズの特定の源泉については充分に知られていない。
ヒト組織中のおおよそのスズ濃度(灰化濃度:ppm)は、脳:0.06、気管:6.08、食道:4.55、甲状腺:2.3-3.2、心臓:1.64、肺:1.2、副腎:2.5-3.6、脾臓:1.7-2.4、膵臓:1.75、肝臓:6.5-9.6、腎臓:5-5.5、胃:3.5-4.3、横隔膜:1.76、小腸:30、大腸:9、直腸:1.5-4.2、精巣:1.87、卵巣:5.4、子宮:2.2、血液:0.005-4.7である。
8 臓器特異性
体内に吸収されたスズは主に骨に蓄積し、骨形成の阻害や骨の脆弱化の原因となる。最近、Cardarelli ら(8)は胸腺がスズの主な貯蔵庫であり、スズは胸腺内で癌細胞に作用する循環性のスズステロイドに作り替えられ、スズ−胸腺−抗癌なる軸の存在のもとに、亜鉛との相乗あるいは拮抗により発癌に対する生体防御に重要な機能を果たしているという仮説を提唱した。しかし、この仮説もヒトを含め他の動物一般に適用できるかどうかは未だ確認されていない。われわれの追試では、一般動物における胸腺中のスズが極めて微量(現在の方法論では検出限界に近い)であり、これがこの仮説の支持を妨げている。
9 毒性
9・1 金属スズ
金属スズ 30-50mg/kg 添加飼料で飼育したネコ、ウサギ、ネズミは年余にわたり健常であったという報告やウサギに 6-10日間、毎日1g の大量を摂取させて死亡させた報告などがあるが、金属スズの経口毒性は低く、大量の経口摂取で嘔吐を惹起する程度である。
9・2 無機スズ
無機スズでは19 世紀の初め、Orfila(9)が塩化スズや酸化スズの毒性を記述したのが最初であるが、19世紀後半より20世紀初頭にかけて缶詰食品のスズ汚染に関する興味から無機スズの毒性に対して著しい関心が払われた。
無機スズの経口毒性は金属スズに比べればかなり強く、塩化第一スズの致死量を 4-6g とする報告がある。また、酸化スズの長期吸引は無症状性の良性塵肺症を生じるとする報告もある。しかし、その後の研究では 730ppm の過剰摂取でも消化器系への刺激のみで全身性の毒性や後遺症は生じないことから、哺乳動物にとっては本質的に無毒であると結論づけられている。
9・3 有機スズ
有機スズの生理活性は対象となる生物によってかなり異なる。昆虫、カビ、細菌、藻類などの下等動物に対しては、活性の強さの順にトリ型(R3SnX)>テトラ型(R4Sn)、ジ型(R2SnX2)>> モノ型(RSnX3)である。このとき、Rがアルキル基の場合、C3(プロピル基)、C4 (ブチル基)のものが最強で、炭素数がこれより少なく、あるいは多くなるほど活性は急激に減少する。
一方、哺乳動物に対する毒性は下等動物の場合と同様に、一般的には R3SnX>>>R4Sn>R2SnX2>RSnX3の順であり、アルキルスズ>アリルスズ、アルキルスズでは炭素鎖の短いもの>長いもの、の傾向が見られる。下等動物と違う点はトリ型(R3SnX)ではC1(メチル基)、C2(エチル基)のものが最強で、炭素数がこれより大きくなるに従い毒性は急激に減少する。これは経口的暴露の場合に限ったもので、腸管での吸収率を反映したものである。X基は生理活性そのものにはほとんど無関係であるが、その化合物の物性、例えば溶解性、揮発性、湿潤性などに大きく関係する。従って、製剤としての性状すなわち薬物としての効果に重大な影響をもっている。
10 生理作用
無機スズによる胃酸分泌の低下、小腸粘膜酵素であるアルカリホスファターゼ活性の阻害、Caの腸管からの吸収の低下、胆汁中へのCa排泄の増加などが観察されており、これがスズの過剰摂取による嘔吐や下痢の原因となっているものと思われる。この他に、腎皮質におけるCaの増加やCa結合タンパク質の結合活性の上昇、ヘム代謝におけるδ−アミノレブリン酸脱水酵素の活性阻害などが観察される。
11 欠乏症
スズ欠乏実験により重篤な成長異常、発育阻害、脱毛、脂漏症、脱力、毒性などが生じることから、成長や発育におけるスズの必須性が唱えられている@。しかし、この必須性もそれに関する分子レベルでの存在形態や機能(未知の機能も含めて)、さらにはヒトへの外挿性などについては未だ充分に確認されていない。
12 過剰症(中毒症)
12・1 金属スズ
金属スズの経口毒性は低く、大量の経口摂取で嘔吐を惹起する。
12・2 無機スズ
個人差があるが食品中含量200-300ppmで嘔吐、嘔気、腹痛など胃腸症状を惹き起こす。pH3という酸性のフルーツポンチの缶詰中スズ含量2000ppmで重篤な胃腸障害発生の記録がある。ちなみに、経気道毒性では酸化スズの長期吸引により無症状性の良性塵肺症の発生事例がある(10)。無機スズは血液−脳関門、血液−胎盤関門を通過しない。
12・3 有機スズ
1)モノアルキルスズ:他のアルキルスズに比し、低毒性で目立った知見なし。
2)ジアルキルスズ:標的臓器は胸腺、胆管である。最も特徴的な症状は微量暴露で胸腺萎縮ならびにT細胞性免疫機能低下が誘発されることであるが、高濃度暴露では胆管炎症や肝の壊死性障害も発現する。ジブチルスズ、ジオクチルスズのようなジアルキルスズは胸腺ならびに胸腺依存性部位を選択的に萎縮させ、T細胞依存性の免疫機能を抑制する。しかし、このジアルキルスズによる胸腺萎縮は一過性であり、連続暴露において回復する。即ち、細胞死抑制因子の発現により耐性が発現する。胸腺萎縮誘発の程度はジブチルスズ、ジオクチルスズ>トリブチルスズ>トリフェニルスズの順であり、かつこの萎縮はこれら物質がもつ他の酸化的リン酸化反応の抑制や脳浮腫よりも鋭敏である。
発症機序としては、(1)胸腺萎縮に関してはカスパーゼ非依存性の細胞死(細胞消失:主としてネクロシス)が主であり、有機スズの細胞膜や核ではなく、ゴルジ体や小胞体領域への集積によるリン脂質代謝系の阻害、細胞膜物性の無秩序化と膜酵素の不活性化、膜情報伝達系の異常によるDNA合成阻害、細胞増殖抑制による細胞死の系が考えられ、また(2)免疫機能の低下に関しては胸腺ホルモンの活性低下などによる胸腺Tリンパ球の分化、成熟過程の異常と免疫応答系の混乱が考えられる。
3)トリアルキルスズ:標的臓器は脳、中枢神経系である。最も特徴的な症状は中枢神経系白質のミエリン内の浮腫に基づく中枢神経症状、海馬Zn2+の消失など海馬変性に伴う学習記憶障害、嗅球Ca2+の過剰蓄積による嗅覚障害などである。一般的には(1)初期では脳震盪に類似、強度の頭痛、吐気、嘔吐、食欲不振、体重減少、(2)確立期では四肢の脱力、麻痺、全身の振戦、脳圧亢進症状、脳白質の間質性浮腫、精神障害、乳頭浮腫、痙攣、昏睡、死亡などが見られる。トリアルキルスズはこの他、胸腺萎縮による免疫不全や精巣萎縮(間質組織の脱落)によるテストステロン分泌抑制などを誘発する。胸腺萎縮はジブチルスズに比べ弱いが、不可逆性である。
発症要因としては、組織により異なるが、(1)膜の構造変化や破壊あるいは膜物性の無秩序化による膜介在情報伝達系の異常および(2)特定微量元素の過剰蓄積による細胞死の誘導が考えられる。即ち、免疫細胞に対しては、ミトコンドリア介在のFas/FasL、膜電位変化、Cytochrome C、Bid、CAD、ICAD、カスパーゼカスケード(Caspase 3, 8, 9 およびそのインヒビター)などのカスパーゼ依存性のアポトーシスを誘導する。海馬神経系細胞に対しては、海馬へのFe3+、Cu2+など遷移元素の蓄積による酸化ストレスを介するアポトーシスを誘導する。また、嗅覚系細胞に対しては、Ca2+過剰蓄積を介する小胞体ストレス系のアポトーシスを誘導する。有機スズは細胞膜や核ではなく、ゴルジ体や小胞体領域へ集積し、それら器官の構造や機能を破壊し、それに伴う細胞内リン脂質輸送系の阻害などによるリン脂質代謝系を阻害する。さらに、これが細胞膜物性の無秩序化と膜酵素の不活性化、それに伴う膜介在の情報伝達系の異常による細胞死やFasリガンドを介する系やCa2+蓄積を介する系、あるいはFe3+、Cu2+など遷移元素の蓄積による酸化ストレスを介する系によるエンドヌクレアーゼ活性化に伴う細胞死(主としてアポトーシス)を誘導する。
4)テトラアルキルスズ:自体の毒性は低く、主として生体内脱アルキル化によりトリ体となり、トリアルキルスズとしての作用を発現する。
5)トリフェニルスズ:消化管系の炎症、肝の病変、免疫抑制、リンパ球の著しい減少などが見られる。
13 スズを多く含む食品と濃度
食品中のスズ含量は他の食品に比べ、缶詰食品(特に野菜や果物)において極端に高い。しかも、ラッカー二重塗装缶では 40ppm 以下であるが、非塗装缶ではおおむね 100ppm 以内となり、内容物が酸性の場合は 300-800ppm と極端に高くなる。一例として、野菜や果物のラッカー二重塗装缶中のスズ含量はアスパラガス38.6ppm、トマト29.4ppm、ピーチ16.6ppmなどである。また、海水中には微量(約3ppb)のスズが含まれており、海産食品の中でも特にカキ、たらなどに濃縮されている。魚介類ではカキが最も多含で0.6ppm である(単位:湿重量当たり)。缶詰以外の植物性や動物性の自然食品にもスズは含まれているが、これらの含量は食物連鎖等を考えるとそれぞれが生育した土壌、河川水、肥料や海水など生活環境中のスズ含量を反映している。
14 有機スズの用途・汚染経路・汚染状況
近年、急速に増大しつつあるスズ生産量の約10〜20%が有機スズ化合物として環境中に産出されている。産業界ではジブチルスズ、ジオクチルスズ、ジメチルスズなどのジアルキルスズがポリ塩化ビニル(PVC)などハロゲン含有樹脂用の安定剤として多用され、また、トリブチルスズ、トリフェニルスズ、トリシクロヘキシルスズなどのトリアルキルスズは、昆虫、真菌、細菌、藻類などに対して有力な生物学的活性があるとして、農用殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺軟体動物剤(淡水産巻貝など寄生虫の中間寄生宿主に対して)、鶏用駆虫剤、木材防腐剤、製紙工場でのスライム生成防止剤、塗料の防カビ剤、船底防汚剤、病院などの消毒剤などに広範に頻用されている。
最近、藻や貝類の付着防止のために船底塗料や養殖用漁網防汚剤に混ぜたトリブチルスズやトリフェニルスズによる海洋汚染が世界的規模で問題となっている。 本件は1985年、著者らと米国商務省・標準局(NBS)や米国海軍研究所との研究協力に端を発したものであるが、その後問題はますます重大化し、魚介類や鳥類への汚染から食物連鎖によるヒトへの汚染が懸念されている。また、本件は現在注目されている海洋生物の生態系の撹乱など、内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)問題の発端でもある。
15 医薬品
歯科用アマルガム、虫歯予防のフッ化スズなどが歯科用に使われているが、現在、新生児黄疸の予防にdichloro(protoporphyrin \)tin(W)、抗がん剤として有機スズ化合物が有効であることが解り、注目されている.
16 ヒトにおける典型的な(集団)中毒事例
16・1 無機スズ
pH 3.0という酸性のフルーツポンチの缶詰(スズ含量:2000ppm)で重症胃腸障害発生の記録がある。缶詰内容液が酸性の場合は果汁に含まれているクエン酸や酒石酸のような弱い有機酸によっても接触している時間に比例してスズが溶出し、クエン酸スズのような無機スズ化合物となり、ある程度以上の濃度(200-300ppm以上)になれば胃腸症状(嘔吐、嘔気、腹痛など)を惹き起こすことになる。
16・2 有機スズ
現在までに報告されているヒトにおける有機スズの典型的中毒事例はほとんどが職業上あるいは医薬品として大量暴露した場合の急性中毒であり、有機スズ汚染食品などからの中毒例は今のところ明確でない。しかし、たとえ微量ではあっても前述の海洋汚染の如く食物連鎖から長期にわたって暴露し、生体濃縮している(潜行型環境汚染の)危険性は十分にある。
外国における古い事例としては実験者が自ら暴露した事例で、トリエチルスズ合成中のヒューム吸引による中毒である(White,1880)。激しい頭痛、嘔気、全身衰弱、下痢、蛋白尿を主訴とした。
最も有名な集団中毒事例は1954年、フランスで起こったスタリノン中毒事件である(11)。スタリノンは皮膚化膿症、にきび、骨髄炎などの細菌感染症に有効な治療薬として頻用された有機スズ製剤で、1カプセル中に15mgのジエチルスズジアイオダイドと賦形剤として100mgのリノールを含む製剤であるが、この中にジエチルスズ量の10% 程度のトリエチルスズアイオダイドが不純物として混入しており、これが中毒の主な原因物質と推定されている。約1000人が服薬し、217人が発病、そのうち110人が死亡した。症状は内服 4日目頃より強い頭痛、嘔気、嘔吐で始まり、一過性の四肢麻痺や視力障害、脳浮腫による頭蓋内圧亢進などを伴う。重症例では意識混濁、痙攣から昏睡状態となり死亡する。110人の死亡者の剖検の結果では脳白質や髄膜に著明な浮腫が認められた。これらの諸症状は動物実験で得たトリエチルスズによる症状と全く同じであった。
他の典型例として、日本における労働災害の事例がある。その1つは10年来、有機スズの製造研究に従事してきた労働者で、頭痛、嘔吐を主訴とし、脳浮腫、脳圧亢進、うっ血乳頭、中等度の乳頭浮腫などのトリアルキルスズ中毒症状や、胆管上皮の変性、肝障害などのジアルキルスズ中毒症状など、動物実験での症状と同様の症状を訴えた。患者の生体試料から高値のスズが検出された。ジアルキルスズの排泄促進治療にBAL、脳浮腫に対しては高張ブドウ糖、チオクト酸、メタボラーゼ、脳圧亢進に対しては尿素、髄圧正常化に間けつ的腰椎穿刺などを施行し、約 6ケ月で脳圧亢進症状の改善をみた。
この他にも、塩化ビニル安定剤の製造に携わる作業者に上気道刺激症状および肝機能障害(1956年)、皮膚障害(1961年)、びらん性表層性角膜炎(1957年)、ブチルスズ合成工に強度の嗅覚障害(1959年)など職業上の中毒事例が報告年されている。
ちなみに、無機スズの場合、ほとんど無毒であるが、ある程度以上の濃度(200-300ppm以上)になれば胃腸症状(嘔吐、嘔気、腹痛など)を惹き起こす。
17 元素の定量法
17・1 検査材料
食品衛生においては水や各種食品から食品用器具・容器包装類に至るまで検査に供する試料の材質は多種多様であり、スズ、有機スズの含有量や用いる分析法の感度なども異なるため、試料の量や調整法は適宜調節する必要がある。
17・2 分析
無機スズの分析については1)SATP(salicylidenamino-2-thiophenol)のスズ錯体が黄色を呈し、キシレンに抽出されることに基づくSATP法、2)ヘマテイン試液による呈色を560nmで吸光度測定するヘマテイン法、3)スズを水素化ホウ素ナトリウム溶液を用いて水素化合物に変換し、原子吸光光度法で測定する水素化物変換ー原子吸光光度法などが食品衛生の領域で推奨されているが、詳細については食品衛生検査指針ー理化学編ー(厚生省生活衛生局監修、社団法人 日本食品衛生協会発行)、1991年、p.201-203を参照されたい。なお、規格基準として清涼飲料水の場合はスズ含量は150.0ppmを超えてはならない。
有機スズの分析については、著者の分析法を参照されたい(12-16)。
18.予防対策
有機スズ化合物については通産省、厚生労働省あるいは環境庁が所管する種々の法律によってその取り扱いや残留基準などが規制されている。
18・1 取り扱い規制
1)トリブチルスズオキサイド(TBTO)は通産省、厚生労働省および環境庁が所管している「化学物質の審査および製造等に関する法律(化審法)」において第一種特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が禁止されている(1990年1月6日より施行)。その他のトリブチルスズの13化合物は当初、製造、輸入量の事後届け出が必要な「指定化学物質」となっていたが、その後、事前届け出が必要な「第二種特定化学物質」に指定された。
2)トリフェニルスズの7化合物は同法において「第二種特定化学物質」に指定され、製造、輸入量の事前届け出が必要で、かつ製造、輸入が必要に応じて制限されている(1990年1月6日施行)。
3)現在、同法に基づいて作業環境の管理、ならびに作業者の健康管理、衛生教育の実施が行政指導されている。
18・2 残留規制
1)食品衛生法の食品・食品添加物等規格基準(以下、規格基準)において、酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズが農薬として残留基準を定められている。また、器具・容器包装についての規格基準では飲食器、割烹具に対してジブチルスズ化合物の基準が定められている。
2)農薬取締法の登録保留基準にも酸化フェンブタスズの基準が定められている。ちなみに、従来より農薬として頻用されていた数種のトリフェニルスズは1990年9月に農薬登録から抹消され(失効)、その使用は禁止されている。
18・3 一日許容摂取量(ADI)
厚生労働省は有機スズ化合物(特に魚肉汚染で問題となっている物質)の安全性評価ならびに試験法に関する通達(1985.4.26付衛乳第18号、1994.2.25付衛乳第20号)の中で、わが国独自の一日許容摂取量をトリブチルスズオキサイドについては1.6μg/kg/日、トリフェニルスズについては0.5μg/kg/日と設定している。しかし、これらの物質についても規格基準は定められていない。
18・4 外国基準
FAO/WHO合同残留農薬部会設定の国際基準や米国連邦規則(CFR:Code of Federal Regulation)の許容基準などでは酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズの他に、トリフェニルスズの塩化物、酢酸塩、水酸化物などが規制されている。
19 関連の著書、総説
1)Y. Arakawa, Chemistry of Tin, Chapter 10: Recent studies on the mode of biological action of the di- and tri-alkyltin compounds, p.388-428, Blackie Academic & Professional, Chapman & Hall, Glasgow, U.K (1998)
2)Y. Arakawa, Main Group Elements and Their Compounds, p.422-445, Narosa Publishing House, New Dehli, India (1996)
3)Arakawa Y. Tin and Immunity. −Review−. Biomed. Res. Trace Elements, 6(2),1−34 (1995)
4)Y. Arakawa et al. Metal Ions in Biological Systems, Volume 29; Chapter 4: Biological properties of alkyltin compounds, p.101−136, Marcel Dekker, Inc. New York (1993)
5)Y. Arakawa, Chemistry and Technology of Silicon and Tin, Chapter 23: p.319−333, Oxford University Press, Oxford (1992)
6)Y. Arakawa et al. Tin and Malignant Cell Growth, Chapter 9: p.83−106, CRC Press, Boca Raton, Florida (1988)
7)荒川泰昭、「食中毒予防必携」第2版、5.化学物質等による食中毒−スズ、有機スズ.p361-378、厚生省生活衛生局、日本食品衛生協会、東京、(2007)
8)荒川泰昭、「生命元素事典」第2章 2.必須微量元素−スズ、p126-130、オーム社、東京、(2006)
9)荒川泰昭、「予防医学事典」F.環境・134.有機スズ、p307-309、朝倉書店、東京、(2005)
10)荒川泰昭、特集「微量元素と健康」―癌免疫と微量元素―(総説)Biomed.Res.Trace Elements 15(4),317-325 (2004)
11)荒川泰昭、トピックス「免疫機能における微量元素の栄養と毒」―金属による胸腺免疫の病的老化―(総説)Biomed.Res.Trace Elements 14(4),249-258 (2003)
12)荒川泰昭、「食品汚染性有害物事典」、産業調査会出版、東京、(1999)
13)荒川泰昭、栄養―評価と治療、特集“微量元素の評価”「微量元素の栄養状態の評価としての免疫能について」(総説)、16(2), 73-83、メデイカルレビュー社、大阪、(1999)
14)荒川泰昭、「食中毒予防必携」3.化学物質による食中毒−スズ、有機スズ.p181-199厚生省生活衛生局、日本食品衛生協会、東京、(1998)
15)荒川泰昭:錫の生物活性と免疫(総説)、産業衛生学雑誌、39、1-20(1997)
16)荒川泰昭、「総合食品安全事典」、第5章「食品汚染性有害物」6 トリブチル錫, トリフェニル錫、p368−376、東京産業調査会、東京、(1994)
17)荒川泰昭、錫と免疫(総説)、微量栄養素研究、11、13−35(1994)
18)荒川泰昭、毒性試験講座 第10巻「免疫毒性」、金属、p119−143、地人書館、東京、(1991)
20 文献
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