日之影神楽・大人神楽
大人神楽(岩井川系)の夜神楽 (岩井川神社・歌舞伎の館)
■ 日之影神楽
日之影神楽は、日之影町内27地区に伝わる神楽の総称で、毎年11月末から2月にかけて、秋の収穫への感謝と翌年の五穀豊穣を祈願して、集落の土地神あるいは氏神を神社から神楽宿(神楽を奉納する場所)として選ばれた民家や公民館などにお迎えして奉納されている。とくに、大人(おおひと)地区では、夜神楽が行われており、日暮れから夜明けまで、二十八番すべての舞が踊り明かされる。
過っては、日之影町内三十六座の伝承集落の内、夜神楽が行われるのは、岩井川系の大人神楽の他に、深角系の大菅神楽、岩戸系の鹿川神楽の三座で、しかも三十三番の奉納であったが、最近、鹿川はここ数年中断しているとのこと、大菅も三十三番の奉納は行なわなくなっているとのこと、もちろん他の地域は番数を少なくして奉納されているとのことで、実際には、「大人神楽」だけが日之影神楽では唯一、三十三番の夜神楽を奉納する神楽座となっていた。しかし現在、大人神楽・夜神楽の演目数は二十八番となっている。
日之影神楽は、御神屋の設え、装束、採り物、仮面など、また「岩戸五番」を重んじる演目構成など、全てにおいて高千穂神楽の様式を踏まえており、神楽歌や太鼓のリズム、笛の旋律なども同一であることから、高千穂神楽と同系統のものであるとされているが、内容的には、地区による神庭の設定や御神体等の所作の違いや、各地区の氏神様が登場する演目の違いなど、地域独特の展開も見られ、厳密には「岩井川系(いわいがわ)」(大人、上小原、古園、大楠、小崎、追川、糸平、興地、星山、矢形の的)、「深角系(ふかすみ)」(深角、一の水、波瀬、宮水、松の内、奥、大菅、新畑)、「岩戸系」(椎谷、高巣野、平清水、戸の口、楠原、竹の原、中村、中川、上下顔、鹿川)、「四ヶ惣系(しかそ)」(阿下、舟の尾、新町、八戸上)の4系統に分類されている。
過っては、日之影町内三十六座の伝承集落の内、夜神楽が行われるのは、岩井川系の大人神楽の他に、深角系の大菅神楽、岩戸系の鹿川神楽の三座で、しかも三十三番の奉納であったが、最近、鹿川はここ数年中断しているとのこと、大菅も三十三番の奉納は行なわなくなっているとのこと、もちろん他の地域は番数を少なくして奉納されているとのことで、実際には、「大人神楽」だけが日之影神楽では唯一、三十三番の夜神楽を奉納する神楽座となっていた。しかし現在、大人神楽・夜神楽の演目数は二十八番となっている。
日之影神楽は、御神屋の設え、装束、採り物、仮面など、また「岩戸五番」を重んじる演目構成など、全てにおいて高千穂神楽の様式を踏まえており、神楽歌や太鼓のリズム、笛の旋律なども同一であることから、高千穂神楽と同系統のものであるとされているが、内容的には、地区による神庭の設定や御神体等の所作の違いや、各地区の氏神様が登場する演目の違いなど、地域独特の展開も見られ、厳密には「岩井川系(いわいがわ)」(大人、上小原、古園、大楠、小崎、追川、糸平、興地、星山、矢形の的)、「深角系(ふかすみ)」(深角、一の水、波瀬、宮水、松の内、奥、大菅、新畑)、「岩戸系」(椎谷、高巣野、平清水、戸の口、楠原、竹の原、中村、中川、上下顔、鹿川)、「四ヶ惣系(しかそ)」(阿下、舟の尾、新町、八戸上)の4系統に分類されている。
■ 岩井川神楽
● 宮崎県日之影町
宮崎県日之影町は、宮崎県の最北山間部で高千穂町の隣に位置し、九州の百名山に名を連ねる傾山などの山々や、山間を流れる五ヶ瀬川と日之影川によって形成された深いV字型の渓谷など、町の総面積の9割が森林と緑に恵まれた自然豊かな町である。日向国・西臼杵郡・高千穂は神代の旧跡が多く、岩井川村大人を檍原大日止と称していた。
● 岩井川神社
鎮座地:日之影町大字岩井川2422-1、境内面積7331.25坪(24,435m2)、創立年月日 不詳。瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が高天原から高千穂に降臨した後に、天都神(あまツかみ)三柱(天地開闢の後に化生した三柱の神)を勧請し、太子大明神として崇拝していたが、明治4年に小社をここに合併し岩井川神社と改称した。祭神は、天地開闢(国産み・神産み)の後に化生した原初の創造神である三柱の神:国常立尊(くにのとこたちのかみ:始源神、日本の国土の床(土台、大地)の出現を表す。大地神)、国狭槌尊(くにさつちのかみ:神稲を植える土の意か。大地の様子を表す神、山の神、海神)、そして三番目の豊斟渟尊(とよくむぬのみこと=豊雲野神(とよくもののかみ):豊かな雲の意であり、雲を神格化した存在とされる)、および大山祇尊、菅原道真公である。社殿に通ずる石段は長い年月により風化が酷く、鳥居から下部の部分は改修されたが、上部には当時の石工の技術をうかがわせる200段の石段が残っている。石段の総数は307段あり、神社の石段としては特に長いものである。
▼ 大人神楽(岩井川神社・歌舞伎の館)
日之影町には現在27の地区で神楽が各神楽保存会により伝承されており、大人神楽(おおひとかぐら)は、(大人、上小原、古園、大楠、小崎、追川、 糸平、興地、星山、矢形の的)地区の神楽で岩井川系の夜神楽である。鎮守は岩井川神社、神楽宿は神社の下に位置する「歌舞伎の館」(日之影町岩井川2822)である。
● 演目内容
1.迎え神楽(岩井川神社にて、迎え神楽を奉納)、2.注連神楽(岩井川神社にて)、3.舞い入れ(岩井川神社より麓の神楽宿「歌舞伎の館」まで道神楽を舞いつつ「舞い入れ」を行う)、(岩井川神社から長い石段(307段)を下りてくる姿は壮観)、そして、会場となる神楽宿「歌舞伎の館」に神を迎え入れ、主な神事と直会(なおらい)の後、午後7時から「夜神楽」が始まる。そして翌日の午前12時まで、神秘なる神楽が舞い継がれる。
夜神楽の演目は、1.森の正教(しょうぎょう)(二人舞:高千穂神楽の「御神屋誉め」に相当する番付で、設営された御神屋の出来ばえを誉め、諸神を招き寄せる神事儀礼。太鼓と唱教だけで進み、次番「彦舞」へと続く)(以降は歌舞伎の館にて)。2.彦舞(面)(猿田彦の舞)、3.東西(とうせい)(八百万神申し降し舞)、ここまでが高千穂神楽の「式三番」に相当。4.鎮守(神鎮まりの舞:御神屋を清め、神々の鎮まりを願う舞)、5.天神様の舞(面)(土地神出座の舞)、6.神颪(かみおろし)(神を招じ降す舞:八百万神を御神屋に招き入れるための舞)、7.八鉢(やつばち)(薬学の神・穀霊神・酒造りの神・芸能神など多くの神格を持つ少彦名命伝承に基づくアクロバットな喜びの舞)と続く演目が地主神降臨の舞に相当。8.杉登(昇神の舞:杉を伝わって主祭神の降臨を促す舞)、9.座張(ざはり)(面)(天太玉命の舞:災厄神を祓い、験力を示す舞。通称、あばれ神楽と呼ばれる。毛笠にタスキ、素足、注連縄を襷掛けし、御神屋を東西に駆け走る荒舞い)の演目で天太玉命が降臨。そして、10.注連口(しめくち)、11.みこやほめ(御神屋誉め:祭場を清め、暮らしの安全を祈願する太鼓唱儀)でようやく今晩一晩を舞い継ぐ御神屋が完成する。12.武智(建御雷神タケミカヅチ・武神:鹿島神宮祭神 戦準備の舞)、13.岩潜(建御雷神タケミカヅチ・武神:鹿島神宮祭神 猿田彦の舞)、14.荒神(面)(猿田彦神が天地の始から国産みに至る順序を説かれる舞)と激しい劔の舞の最中に「荒神(猿田彦とも呼ばれる荒々しい神)」が降臨。15.大神(海津見神ワダツミ・海の神の舞)、16.五津天(建御雷神タケミカヅチ・武神:鹿島神宮祭神&経津主神フツヌシ・剣神:香取神宮祭神 二神祓いの舞)、17.地固(大国主命・国造の舞:地霊をさまし集落の安泰を祈願する舞)と採り物舞が続き、18.八幡様の舞(面)(土地神出座の舞:品陀和気尊が集落守護の招来神として現出した舞)で八幡様が降臨。さらに、19.弓の正護(悪魔を拂う舞)、20.山森(建御雷神タケミカヅチの太鼓を造り給う舞 狩猟神楽)、21.太子様の舞(面)(土地神出座の舞:太子大明神、集落守護として現出の舞)と主祭神降臨の舞が続く。「弓の正護」「山森」は大使様出御の前段の演目に相当か。以後、22.沖逢(高天原の天の真名井の水を降ろす舞)の後、23.手力男の命(面)(手力男の命が天照大神の岩屋を探り給う舞)(岩戸五番)、24.伊勢神楽(天児屋根命 岩戸開き準備の舞:伊勢の縁起を説き、格正しく舞う。岩戸開き序の舞)、(岩戸五番)、25.うずめの命(面)(神楽の起源となる舞:わざおきによって、天照大神を誘い出す舞)(岩戸五番)、26.柴引(面)(太玉命が天香具山より榊を曳き来たる舞:「岩戸五番」の序の舞で、天香具山の榊を岩戸前に飾り、天照大神の出屋を願う舞)(岩戸五番)、27.戸取(面)(手力男命が天岩戸を取り払う舞:天岩戸神話を象徴する舞で、岩戸を開き、人の世に光明を呼び戻す力感あふれる舞)(岩戸五番)の岩戸五番が入り、28.舞開き(面)(天照大神出座の舞:天照大神御出ましの舞:岩戸開きが叶い、天照大神の出座を喜び、両の手に月形日形をかざし、祝意を表す舞。手力男と天照大神)が最後の演目となる。舞開後にせんぐまき(もちまき)あり。
高千穂神楽と同様に、日之影神楽も、かつてはそれぞれの地区で、毎年11月末から翌年2月にかけて三十三番の夜神楽が舞われていたというが、最近では、三十三番を伝える地区はないという。町内唯一の夜神楽である大人神楽でも通常二十八番である。神楽の演目は、地域によって異なるが、「座張」、「柴引」、「戸取」など面を着けた演目はあばれ神楽とも言われ、客席にも飛び込む、動きの激しい舞いで、大人神楽の特徴でもあり、また人気の舞いであるという。また、大人神楽の演目で注目されるのは、神渡しに関連して、「八幡様の舞」や「太子様の舞」など「土地神出座の舞」の挿入があることで、これも特徴の1つであろう。
夜神楽の演目は、1.森の正教(しょうぎょう)(二人舞:高千穂神楽の「御神屋誉め」に相当する番付で、設営された御神屋の出来ばえを誉め、諸神を招き寄せる神事儀礼。太鼓と唱教だけで進み、次番「彦舞」へと続く)(以降は歌舞伎の館にて)。2.彦舞(面)(猿田彦の舞)、3.東西(とうせい)(八百万神申し降し舞)、ここまでが高千穂神楽の「式三番」に相当。4.鎮守(神鎮まりの舞:御神屋を清め、神々の鎮まりを願う舞)、5.天神様の舞(面)(土地神出座の舞)、6.神颪(かみおろし)(神を招じ降す舞:八百万神を御神屋に招き入れるための舞)、7.八鉢(やつばち)(薬学の神・穀霊神・酒造りの神・芸能神など多くの神格を持つ少彦名命伝承に基づくアクロバットな喜びの舞)と続く演目が地主神降臨の舞に相当。8.杉登(昇神の舞:杉を伝わって主祭神の降臨を促す舞)、9.座張(ざはり)(面)(天太玉命の舞:災厄神を祓い、験力を示す舞。通称、あばれ神楽と呼ばれる。毛笠にタスキ、素足、注連縄を襷掛けし、御神屋を東西に駆け走る荒舞い)の演目で天太玉命が降臨。そして、10.注連口(しめくち)、11.みこやほめ(御神屋誉め:祭場を清め、暮らしの安全を祈願する太鼓唱儀)でようやく今晩一晩を舞い継ぐ御神屋が完成する。12.武智(建御雷神タケミカヅチ・武神:鹿島神宮祭神 戦準備の舞)、13.岩潜(建御雷神タケミカヅチ・武神:鹿島神宮祭神 猿田彦の舞)、14.荒神(面)(猿田彦神が天地の始から国産みに至る順序を説かれる舞)と激しい劔の舞の最中に「荒神(猿田彦とも呼ばれる荒々しい神)」が降臨。15.大神(海津見神ワダツミ・海の神の舞)、16.五津天(建御雷神タケミカヅチ・武神:鹿島神宮祭神&経津主神フツヌシ・剣神:香取神宮祭神 二神祓いの舞)、17.地固(大国主命・国造の舞:地霊をさまし集落の安泰を祈願する舞)と採り物舞が続き、18.八幡様の舞(面)(土地神出座の舞:品陀和気尊が集落守護の招来神として現出した舞)で八幡様が降臨。さらに、19.弓の正護(悪魔を拂う舞)、20.山森(建御雷神タケミカヅチの太鼓を造り給う舞 狩猟神楽)、21.太子様の舞(面)(土地神出座の舞:太子大明神、集落守護として現出の舞)と主祭神降臨の舞が続く。「弓の正護」「山森」は大使様出御の前段の演目に相当か。以後、22.沖逢(高天原の天の真名井の水を降ろす舞)の後、23.手力男の命(面)(手力男の命が天照大神の岩屋を探り給う舞)(岩戸五番)、24.伊勢神楽(天児屋根命 岩戸開き準備の舞:伊勢の縁起を説き、格正しく舞う。岩戸開き序の舞)、(岩戸五番)、25.うずめの命(面)(神楽の起源となる舞:わざおきによって、天照大神を誘い出す舞)(岩戸五番)、26.柴引(面)(太玉命が天香具山より榊を曳き来たる舞:「岩戸五番」の序の舞で、天香具山の榊を岩戸前に飾り、天照大神の出屋を願う舞)(岩戸五番)、27.戸取(面)(手力男命が天岩戸を取り払う舞:天岩戸神話を象徴する舞で、岩戸を開き、人の世に光明を呼び戻す力感あふれる舞)(岩戸五番)の岩戸五番が入り、28.舞開き(面)(天照大神出座の舞:天照大神御出ましの舞:岩戸開きが叶い、天照大神の出座を喜び、両の手に月形日形をかざし、祝意を表す舞。手力男と天照大神)が最後の演目となる。舞開後にせんぐまき(もちまき)あり。
高千穂神楽と同様に、日之影神楽も、かつてはそれぞれの地区で、毎年11月末から翌年2月にかけて三十三番の夜神楽が舞われていたというが、最近では、三十三番を伝える地区はないという。町内唯一の夜神楽である大人神楽でも通常二十八番である。神楽の演目は、地域によって異なるが、「座張」、「柴引」、「戸取」など面を着けた演目はあばれ神楽とも言われ、客席にも飛び込む、動きの激しい舞いで、大人神楽の特徴でもあり、また人気の舞いであるという。また、大人神楽の演目で注目されるのは、神渡しに関連して、「八幡様の舞」や「太子様の舞」など「土地神出座の舞」の挿入があることで、これも特徴の1つであろう。
<中学恩師・今林和佐子先生写真提供>
岩井川神社での「宮神楽」(迎え神楽)奉納後、307段の石段を舞い降りる大人神楽の行列
会場となる神楽宿「歌舞伎の館」
「舞い入れ」:会場となる神楽宿「歌舞伎の館」まで道神楽を舞いつつ神を迎え入れる
彦舞「幣神添」
「彦舞」
「天神様の舞」
「神颪」
「座張」
「武智」
「大神」
「五津天」
「弓の正護」
「山森」
「太子様の舞」
「伊勢神楽」
「柴引き」
「舞開き」