「豊前神楽」(国重要無形民俗文化財)を寸見
恩師宅訪問の帰途、「豊前神楽」(友枝神楽講)を寸見する(豊前・貴船神社)
シーズン到来!豊前市内では五穀豊穣を感謝する秋祭りが始まっており、京築地域を中心とした旧豊前国(福岡県東部〜大分県北部)に伝承され、2016年(平成28年)3月に国重要無形民俗文化財に指定された「豊前神楽」が、毎週のようにどこかの地区のお宮で奉納されている。この奉納は、毎年、稲刈りも終えた10月を中心として秋から冬にかけて、それぞれの神楽団体(保存会)により各神社での日程が組まれている。恩師宅訪問の帰途、松崎君の案内で、当日奉納中だった友枝神楽講の「豊前神楽」を寸見する。(豊前・貴船神社) 2018年10月20日 |
■ 豊前神楽
豊前神楽: 平成28年3月、京築地域を中心とした旧豊前国(福岡県東部〜大分県北部)に伝わる神楽が、「豊前神楽」として国の重要無形民俗文化財に指定された。複数県にまたがる民俗芸能の指定は初めてのことで、京築地区(行橋市、豊前市、京都郡、築上郡が属する地域)の2市5町の30団体のうち28の神楽団体が選定されたという。
豊前神楽の起源は古く中世の頃には既に成立していたと考えられているが、文献などでその内容が確認できるのは江戸時代以降であるという。豊前神楽は、祓いの舞を中心とした「式神楽」と、出雲神話を題材とした「奉納神楽」に大別されるが、出雲系の神楽を中心としながらも、伊勢系の「湯立神楽」が含まれている。とくに、「湯立神楽」は、京築神楽を特徴づける祈祷色の強い演目で、求菩提山で隆盛を誇った山岳修験文化の影響を強く残している点が大きな特徴であるという。また、豊前神楽は、鬼役の「駈仙(みさき);御先、御前などともいう)」が登場する演目が「駈仙」だけでなく、「綱駈仙」、「乱駈仙(みだれみさき)」、「神迎(かみむかい)」など、多様であることも特徴の一つであるという。
式神楽には、花神楽、笹神楽、弓正護、地割などの演目があり、神楽本来の優雅な舞が見られ、厳粛な雰囲気を味わうことができるという。最も人気のある演目の「岩戸開き」いわゆる「岩戸神楽」も式神楽のひとつであるが、大作なので、別格にオーソドックスな演目として扱われ、神々の力感あふれる舞が見られるという。そして、出雲神話にもとづく奉納神楽では、駈仙(御先)神楽、綱駈仙神楽、大蛇退治や神迎神楽、アクロバット的な要素を持つ剣神楽、盆神楽などの楽しい奉納神楽の演目があるという。
また、修験道の強い影響が窺える「湯立神楽」は、いたるところに陰と陽(天と地)の調和・融合・交合を祈り、順調な五行の循環を祈る場面があり、その所作も境内に高足の釜を据え、高い柱(斎鉾ゆぼこ)に登り、呪具を投げ下ろし、曲芸的な所作や火渡りを行うなど、他地域には見られない大がかりな演目である。さらに、上演形態にも特徴がみられる。神楽の奉納は式神楽と奉納神楽(「アゲ神楽」)の二部構成とし、奉納神楽(アゲ神楽)は当日の奉納料支払済祈願者の希望する演目順に舞うという他地域ではあまり見られない特徴的な上演形態であるという。
今回は、時間的余裕がなく短時間の観賞であったが、神楽上演の最初に行われる「大祝詞事」( 「奉幣」「勧請奉幣」「祝詞奏上」「祓舞」などとも呼ばれる)と奉幣の後に最初に舞われる式神楽「壱番神楽」と豊前神楽の真髄とも言うべき「御先神楽」( 「式駈仙」「駈仙」「駈仙神楽」とも言われる)を寸見することができた。
その中で、「御先神楽」(駈仙神楽)は、駈仙と幣方が登場する式神楽で、駈仙は猿田彦之命といわれ、毛頭と鬼面をつけて鬼杖と扇を持っている。幣方はホシャドン(神職)とも呼ばれ、一般に天鈿女命だといわれている。幣方は烏帽子を被り、狩衣と大口袴を着て幣と鈴を持っている。
鬼面をつけた御先と幣方との舞であるが、この神楽は日本神話の天孫降臨の場面を表わしたものである。天照大御神の孫である邇邇藝命(ににぎのみこと)が高天原から天下ってきた時、その通り道である天の八衢(あまのやちまた)を遮っている奇怪な姿の猿田彦命に出会う。そこで、邇邇藝命のお供をしていた天鈿女命(あめのうずめのみこと)が問い質したところ、猿田彦命は「道案内に参りました」と言う。駈仙は、そのありさまを描いた神楽だといわれる。
駈仙は御先とも書くように、ミサキ神は先導する神であり、その速さは馬が駆けるように早いということで、駈仙と書くという。まさに猿田彦命である。この御先神楽は、神楽講によって、式神楽である「式駈仙」と奉納神楽である「駈仙神楽」とに分けて演出される場合と特に分けずに演出する場合があるが、もともと駈仙神楽は奉納神楽でもあることから、奉納神楽の中では最も人気のある演目であるという。荒ぶる神の鎮魂であると考えられ、数多くの駈仙神楽が奉納されているという。
豊前神楽の起源は古く中世の頃には既に成立していたと考えられているが、文献などでその内容が確認できるのは江戸時代以降であるという。豊前神楽は、祓いの舞を中心とした「式神楽」と、出雲神話を題材とした「奉納神楽」に大別されるが、出雲系の神楽を中心としながらも、伊勢系の「湯立神楽」が含まれている。とくに、「湯立神楽」は、京築神楽を特徴づける祈祷色の強い演目で、求菩提山で隆盛を誇った山岳修験文化の影響を強く残している点が大きな特徴であるという。また、豊前神楽は、鬼役の「駈仙(みさき);御先、御前などともいう)」が登場する演目が「駈仙」だけでなく、「綱駈仙」、「乱駈仙(みだれみさき)」、「神迎(かみむかい)」など、多様であることも特徴の一つであるという。
式神楽には、花神楽、笹神楽、弓正護、地割などの演目があり、神楽本来の優雅な舞が見られ、厳粛な雰囲気を味わうことができるという。最も人気のある演目の「岩戸開き」いわゆる「岩戸神楽」も式神楽のひとつであるが、大作なので、別格にオーソドックスな演目として扱われ、神々の力感あふれる舞が見られるという。そして、出雲神話にもとづく奉納神楽では、駈仙(御先)神楽、綱駈仙神楽、大蛇退治や神迎神楽、アクロバット的な要素を持つ剣神楽、盆神楽などの楽しい奉納神楽の演目があるという。
また、修験道の強い影響が窺える「湯立神楽」は、いたるところに陰と陽(天と地)の調和・融合・交合を祈り、順調な五行の循環を祈る場面があり、その所作も境内に高足の釜を据え、高い柱(斎鉾ゆぼこ)に登り、呪具を投げ下ろし、曲芸的な所作や火渡りを行うなど、他地域には見られない大がかりな演目である。さらに、上演形態にも特徴がみられる。神楽の奉納は式神楽と奉納神楽(「アゲ神楽」)の二部構成とし、奉納神楽(アゲ神楽)は当日の奉納料支払済祈願者の希望する演目順に舞うという他地域ではあまり見られない特徴的な上演形態であるという。
今回は、時間的余裕がなく短時間の観賞であったが、神楽上演の最初に行われる「大祝詞事」( 「奉幣」「勧請奉幣」「祝詞奏上」「祓舞」などとも呼ばれる)と奉幣の後に最初に舞われる式神楽「壱番神楽」と豊前神楽の真髄とも言うべき「御先神楽」( 「式駈仙」「駈仙」「駈仙神楽」とも言われる)を寸見することができた。
その中で、「御先神楽」(駈仙神楽)は、駈仙と幣方が登場する式神楽で、駈仙は猿田彦之命といわれ、毛頭と鬼面をつけて鬼杖と扇を持っている。幣方はホシャドン(神職)とも呼ばれ、一般に天鈿女命だといわれている。幣方は烏帽子を被り、狩衣と大口袴を着て幣と鈴を持っている。
鬼面をつけた御先と幣方との舞であるが、この神楽は日本神話の天孫降臨の場面を表わしたものである。天照大御神の孫である邇邇藝命(ににぎのみこと)が高天原から天下ってきた時、その通り道である天の八衢(あまのやちまた)を遮っている奇怪な姿の猿田彦命に出会う。そこで、邇邇藝命のお供をしていた天鈿女命(あめのうずめのみこと)が問い質したところ、猿田彦命は「道案内に参りました」と言う。駈仙は、そのありさまを描いた神楽だといわれる。
駈仙は御先とも書くように、ミサキ神は先導する神であり、その速さは馬が駆けるように早いということで、駈仙と書くという。まさに猿田彦命である。この御先神楽は、神楽講によって、式神楽である「式駈仙」と奉納神楽である「駈仙神楽」とに分けて演出される場合と特に分けずに演出する場合があるが、もともと駈仙神楽は奉納神楽でもあることから、奉納神楽の中では最も人気のある演目であるという。荒ぶる神の鎮魂であると考えられ、数多くの駈仙神楽が奉納されているという。
▼ 式神楽(「大祝詞事」「壱番神楽」「御先神楽」)を寸見
「大祝詞事」(「奉幣」「勧請奉幣」「祝詞奏上」「祓舞」など)と呼ばれ、神楽の開始を神様に告げる大祓祝詞や祈願文の読み上げと舞が、神楽上演の最初に行われる。それから、幣と扇を持った四人の舞人が登場して舞う採物神楽が始まる。奉幣の後に最初に舞われる式神楽なので「壱番神楽」と呼ばれる。 |
毛頭と鬼面をつけて鬼杖と扇を持っている鬼役の御先(駈仙」)(猿田彦之命)と烏帽子を被り、狩衣と大口袴を着て幣と鈴を持っている幣方(神職)(天鈿女命)との舞で、日本神話の天孫降臨の場面を描いた「御先神楽」(駈仙神楽)である。 |
2018.10.20 14.40〜撮影あ