特集寄稿:コロナ禍に思う ー人類への啓示ー
コロナ禍が、考えさせ、気付かせる 「人類への啓示」
Feature Contribution:The corona disaster makes someone
think about and aware of “Revelation to mankind”
think about and aware of “Revelation to mankind”
同窓会誌・特集「今、世の中に伝えたいこと」への寄稿 2022年7月23日
Contribution to a special edition about “What someone wants to tell the world now” of an Alumni bulletin 2022.7.23
■ 同窓会誌・特集寄稿「コロナ禍に思う−人類への啓示−」
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特集寄稿:コロナ禍に思う ー人類への啓示ー
コロナ禍が、考えさせ、気付かせる 「人類への啓示」
2022年7月23日 寄稿 10月20日 発刊ああああああ
■ 寄稿原稿
コロナ禍に思う −人類への啓示−
荒川 泰昭 (35回生)
鬱然たるコロナ禍中に、中学高校時代の同窓からの電話は一服の安らぎを与えてくれるが、6月中旬、同窓会誌「硯の海」への寄稿依頼が届いた。一昨年に続いての寄稿を慮るも、世に一喝をと押され、予防医学者として半世紀前より訴えていた「生態系破壊の惑業苦(わくごっく;煩悩・悪行・苦しみの悪因悪果の悪循環)」をコロナ禍に絡めて、ミクロとマクロの両面から、拙稿させて頂くことにした。
今回の「新興感染症」(COVID-19)は、中国武漢市に端を発し、現代のグローバル化が仇となり、地球規模のパンデミックを発生させ、人類史上類を見ない未曾有の感染災害を引き起こした。その感染源については、コウモリ由来説など諸説あるが、変異痕跡から数種の中間宿主の介在が考えられている。
そこで、今回の騒動を検証すべく、新型ウイルス(SARS-CoV-2)の正体や挙動を「生涯過程」の観点から、「感染の機序」を中心に纏めてみた。字数の都合で、感染機序の詳細は割愛するが、その概要だけでも簡単に述べておきたい。
この新型ウイルスの挙動は実にユニークで、ウイルスのスパイク(S)蛋白質と宿主(咽喉や肺)細胞の受容体との強力な結合・融合を経て、細胞内へ侵入後、免疫監視機構を回避しながら細胞の諸器官を乗っ取り、改造し、隠密化した改造小胞体で複製・翻訳し、自らの複製(新生ウイルス粒子)を大量に製造、貯留する。そして、新生ウイルス粒子は、表口の細胞膜から出芽せず、脂質二重膜で身を被い、敢えて裏口の廃棄処理器官(ゴルジ体やリソソーム)から細胞外に出る。しかも、この細胞外に出る直前で、次の獲物(宿主)への攻撃(侵入)準備、すなわち感染速度を速めるために、予めS蛋白質の結合部位を切断する。(この切断部位の性状により、感染力の異なる変異株が生まれる)。などの過程を経る。
このように、この新型ウイルスは、特異な能力、技能そして知恵を有することで、急速な感染拡大能力や致死能力を極端に高めているのである。
しかも、変異の速度も速く、最近では下気道を標的とする致死性の高いデルタ株から、上気道を標的とする軽症性のオミクロン株およびその系統の変異株(BA.1<BA.2)へと置き換わり、さらに直近では、既感染や既ワクチン接種に抵抗して、より強力な免疫/中和回避能を持つ(=易再感染性の)変異株(BA.4<BA.5)へと置き換わり、感染速度を益々速め、感染力を爆発的に増大させる戦略へと変化させている。
この新型ウイルスは、RNAウイルスであり、複製ミスの修復機能がないため、遺伝子変異が生じやすく、置かれた環境に適応すべく、次々と遺伝子変異を繰り返す。また自力では増殖できないため、人間や動物などの細胞に侵入し、自らの複製を大量に作らせ、増大・伝播させながら、必死で生き延びようとする。まさに、このウイルスの生存戦略である。しかも、このRNAウイルスの「したたかさ」は、今後「不顕性感染」という形で姿を隠し、人間の欲望や生活循環に巧みに寄生し、永遠に人間社会で生き続ける可能性すらある。
このような「新興感染症」、「新型ウイルス」の出現を考える時、常に脳裏をよぎるのは、「生態系破壊の惑業苦」である。即ち、生態系における人間の能力の域をはるかに超えて、自然循環(生態系)に入り得ない人為環境(人間の社会系)を地球的規模にまで拡大化させてしまったこと。その結果、生物系、自然系との相互作用を破壊し、地球的規模の環境問題を引き起こし、地球的規模にまで生態系の破綻を拡大させ、人類の生存にまで影響を及ぼすことになったこと。など、悪因悪果の悪循環に嵌っていることである。
今回の新型コロナウイルス感染症は、とくに、その人為環境の拡大が、ウイルスの生態系を破壊し、本来の生息地や野生動物の中で身を潜めて生きていたウイルスを、引きずり出しあるいは覚醒させて、出現させた「新興感染症」に他ならない。この事象はまさに天敵(ウイルス)の逆襲であり、人間の利己的な傲慢さに対する戒めであり、人間に行動変容を求める生態系からの警告である。即ち、これらは全て「生態系破壊の惑業苦」に嵌る人類への啓示である。
従って、自然の脅威を忘れ、ややもすると利己性が優先されがちな現代社会において、このウイルスを制し、人類がこの地球上で生き延び、社会の持続性を維持していくためには、即ちこの惑業苦から脱出するためには、人類全体で、「利他行動(相手を思いやる行動)」を取り戻し、自然に対して「利他性」を持って「生態系を含む生物多様性」を尊重する関係(対等な関係)を築いていくべきである、即ち共生の観点から言えば、お互いの多様性を理解し、「自然共生」のあり方を再考し、その構築に努めるべきであると大喝したいのである。(2022年7月23日 寄稿)
―― 同窓会誌「硯の海」特集「今、世の中に伝えたいこと」寄稿:1940字
今回の「新興感染症」(COVID-19)は、中国武漢市に端を発し、現代のグローバル化が仇となり、地球規模のパンデミックを発生させ、人類史上類を見ない未曾有の感染災害を引き起こした。その感染源については、コウモリ由来説など諸説あるが、変異痕跡から数種の中間宿主の介在が考えられている。
そこで、今回の騒動を検証すべく、新型ウイルス(SARS-CoV-2)の正体や挙動を「生涯過程」の観点から、「感染の機序」を中心に纏めてみた。字数の都合で、感染機序の詳細は割愛するが、その概要だけでも簡単に述べておきたい。
この新型ウイルスの挙動は実にユニークで、ウイルスのスパイク(S)蛋白質と宿主(咽喉や肺)細胞の受容体との強力な結合・融合を経て、細胞内へ侵入後、免疫監視機構を回避しながら細胞の諸器官を乗っ取り、改造し、隠密化した改造小胞体で複製・翻訳し、自らの複製(新生ウイルス粒子)を大量に製造、貯留する。そして、新生ウイルス粒子は、表口の細胞膜から出芽せず、脂質二重膜で身を被い、敢えて裏口の廃棄処理器官(ゴルジ体やリソソーム)から細胞外に出る。しかも、この細胞外に出る直前で、次の獲物(宿主)への攻撃(侵入)準備、すなわち感染速度を速めるために、予めS蛋白質の結合部位を切断する。(この切断部位の性状により、感染力の異なる変異株が生まれる)。などの過程を経る。
このように、この新型ウイルスは、特異な能力、技能そして知恵を有することで、急速な感染拡大能力や致死能力を極端に高めているのである。
しかも、変異の速度も速く、最近では下気道を標的とする致死性の高いデルタ株から、上気道を標的とする軽症性のオミクロン株およびその系統の変異株(BA.1<BA.2)へと置き換わり、さらに直近では、既感染や既ワクチン接種に抵抗して、より強力な免疫/中和回避能を持つ(=易再感染性の)変異株(BA.4<BA.5)へと置き換わり、感染速度を益々速め、感染力を爆発的に増大させる戦略へと変化させている。
この新型ウイルスは、RNAウイルスであり、複製ミスの修復機能がないため、遺伝子変異が生じやすく、置かれた環境に適応すべく、次々と遺伝子変異を繰り返す。また自力では増殖できないため、人間や動物などの細胞に侵入し、自らの複製を大量に作らせ、増大・伝播させながら、必死で生き延びようとする。まさに、このウイルスの生存戦略である。しかも、このRNAウイルスの「したたかさ」は、今後「不顕性感染」という形で姿を隠し、人間の欲望や生活循環に巧みに寄生し、永遠に人間社会で生き続ける可能性すらある。
このような「新興感染症」、「新型ウイルス」の出現を考える時、常に脳裏をよぎるのは、「生態系破壊の惑業苦」である。即ち、生態系における人間の能力の域をはるかに超えて、自然循環(生態系)に入り得ない人為環境(人間の社会系)を地球的規模にまで拡大化させてしまったこと。その結果、生物系、自然系との相互作用を破壊し、地球的規模の環境問題を引き起こし、地球的規模にまで生態系の破綻を拡大させ、人類の生存にまで影響を及ぼすことになったこと。など、悪因悪果の悪循環に嵌っていることである。
今回の新型コロナウイルス感染症は、とくに、その人為環境の拡大が、ウイルスの生態系を破壊し、本来の生息地や野生動物の中で身を潜めて生きていたウイルスを、引きずり出しあるいは覚醒させて、出現させた「新興感染症」に他ならない。この事象はまさに天敵(ウイルス)の逆襲であり、人間の利己的な傲慢さに対する戒めであり、人間に行動変容を求める生態系からの警告である。即ち、これらは全て「生態系破壊の惑業苦」に嵌る人類への啓示である。
従って、自然の脅威を忘れ、ややもすると利己性が優先されがちな現代社会において、このウイルスを制し、人類がこの地球上で生き延び、社会の持続性を維持していくためには、即ちこの惑業苦から脱出するためには、人類全体で、「利他行動(相手を思いやる行動)」を取り戻し、自然に対して「利他性」を持って「生態系を含む生物多様性」を尊重する関係(対等な関係)を築いていくべきである、即ち共生の観点から言えば、お互いの多様性を理解し、「自然共生」のあり方を再考し、その構築に努めるべきであると大喝したいのである。(2022年7月23日 寄稿)
―― 同窓会誌「硯の海」特集「今、世の中に伝えたいこと」寄稿:1940字
特集寄稿 「コロナ禍に思う −人類への啓示−」 ➔ 拡大 (pdf)