肺がん疑いで手術を受けて −良かったですね。癌でした。−|「生命と微量元素」講座<荒川泰昭>

「生命と微量元素」講座

肺がん疑いで手術を受けて

内視鏡による右肺上葉の摘出手術

肺癌疑いで手術を受けて
 X線画像で5年間陳旧性と診断されて来て、自覚症状も全く無い状態でしたので、区民検診のダブルチェックでがんを疑われてもピンときませんでした。虎の門病院呼吸器センターで精査の結果、CT、PET/CTでは結節の存在は確認できましたが、がんマーカーは全て陰性。気管支鏡検査では組織採取に失敗し、残念ながら内科的検査では確定できず、肺がんの診断には至りませんでした。
 しかし、がんであっても限局性であり手術(局所治療)で取り切れて治る可能性が高いと判断されました。したがって、疑い病名のまま手術の適応を判断し、手術中の組織診断で方針を決めることとし、診断のための手術と、癌と診断された場合の治療のための手術を行うことになりました。
 呼吸器外科部長の執刀を条件に指名で入院しましたが、さすがに部長の手技は卓越しており、切れ味良く予定した3時間30分の手術時間を1時間早く2時間30分で終了しました。お陰様で術後の痛みも全くありませんでした。
 退院後、術後のケアは再度、呼吸器内科で受療することになりましたが、思いがけずも病期IB期肺腺癌に対しては術後のアジュバント療法(補助療法)としてテガフール・ウラシル配合剤(UFT)療法を勧められました。
 UFTの作用中心である5−フルオロウラシルは、私の開発した新規抗がん機序をもつスズ制癌剤(シスプラチンに代わる新規抗がん剤として)の研究の過程で、30年も前に核(DNA)アタックの制癌剤の1例として対照に利用していたもので、「害多くして効少なし」の副作用の強いものでしたので、一瞬びっくりしました。
 さらに、日本肺癌学会の診療ガイドラインを調べて見て二度びっくり、病期T期では5−フルオロウラシル、病期U期、V期ではプラチナ(シスプラチン)が非小細胞肺癌の術後補助化学療法として推奨されておりました。30年来、全く進歩していないことに驚くと同時に、核ではなく膜情報伝達系(PI代謝回転やチロシンキナーゼ介在)をブロックする新規抗がん剤:スズ制癌剤をもっと自らの手で完成させておけばよかったと後悔している次第です。
 病理所見では、胸膜浸潤なし、脈管侵襲なし、リンパ節転移なし、気管支断端および肺動静脈断端陰性ではありましたが、胸水が溜まっている自覚がありましたので、胸膜や胸水中あるいは切除断端部に数個でも付着あるいは播種したかもしれない種(あるいはがん細胞)があれば初期に叩けば良いと思い、また副作用の徴候が出たら止めることにして、結局治験済みのUFTを術後28日より12日間(200mgx2回/日)だけ服用しました。
 やはり副作用として、自覚的には頭・目痛(重鈍痛)、吐き気、食欲不振、腹部膨満感、右背中痛、手のひらの紅潮、右喉痛など、生化学検査ではクレアチニンの高値、アルホスの急上昇などが観られましたので、服用を中止しました。
 術後の症状としては、気管から肺門にかけて過敏になり、咳喘息のように乾性咳嗽が持続し、激しい気管・胸部痛が続いています。これは呼吸器内科における気管支鏡検査の施術後に発生した手技に伴う医原性の後遺症です。Thy1サイトカイン抑制剤や抗ヒスタミン剤などの抗アレルギー薬を服用していますが、なかなか軽減しません。また、右肋骨下部から右背中側にかけて疼痛や異物感と同時に深呼吸の度にゴロゴロプクプクと臓器あるいは水の移動感があります。この時、聴診器では、左肺に比べザーザーという雑音が激しく聞こえます。胸水が溜まっている自覚がありますが、これもなかなか軽減しません。
 術後の補助療法としては、免疫力を高めることが最も大事ですので、亜鉛、ビタミン剤などの免疫活性化剤のほか、免疫賦活、抗酸化を念頭においた食事に心掛けたいと思います。
術後40日目に記すあああああ

良かったですね。癌でした。

「良かったですね。癌でした。」
「有難うございました。」


−手術場での麻酔覚醒後の河野匡外科部長(執刀医)との第一声−

切除された右肺上葉

切除された右肺上葉

切除された右肺上葉

切除された右肺上葉

右肺上葉切除 13x7x4 cm大
5年前より罹り付けのクリニックにおいて右肺上葉にクサビ型の影を認識していたが、炎症痕など陳旧性のものであろうとの診断で、放置して来たが、東京都の検診でダブルチェックにより精密検査の必要性が指摘された。
「がんの疑い」のための内科的精査、そして「がん」の場合の外科的手術を想定して、この分野で名声のある虎の門病院を選択。
入院検査の結果、内部濃く周囲が淡い影の最大径40〜45mmの結節影。CT、PETでは陽性だが、がんマーカーは全て陰性。気管支鏡検査では組織採取に失敗し、残念ながら内科的検査では確定できず、肺がんの診断には至らなかった。
しかし、「がん」であっても限局性であり手術(局所治療)で取り切れて治る可能性が高いと判断された。そこで、「疑い病名」のまま手術の適応を判断し、手術中に組織診断することで方針を決めることになった。すなわち、診断のための手術と、癌と診断された場合の治療のための手術を行なうことになった。
手術名:胸腔鏡下右肺上葉切除とリンパ節廓清。
手術時間:2時間30分
(さすがに部長の腕は凄い!! 予定より1時間も早く終了した。)
病理所見:浸潤性(孤立性)腺癌、42x25x15 mm大、ステージIb
  胸膜浸潤なし、脈管侵襲なし、リンパ節転移なし

X線

X線

5年前のX線影像 2008.10.01
術前のX線影像 2013.3.29

CT画像

PET/CT画像

術前のCT画像
術前のPET/CT画像

術前のCT画像

術前のCT画像

術前のCT画像
術前のCT画像

術前のPET画像

術前のPET画像

術前のPET画像
術前のPET画像

術後のX線影像

術後のX線影像

右肺上葉切除後4日目  右肺胸腔はすでに中葉、下葉で埋まっている。

病理組織診検査報告書

病理組織診検査報告書

虎の門病院呼吸器センター(内科・外科)のスタッフの皆さん

お世話になりました。有難うございました。
呼吸器内科
呼吸器内科部長 岸 一馬 先生
佐藤 寿高 先生
高橋 由以 先生
呼吸器外科

主治医、担当医

呼吸器外科部長 河野 匡 先生
鈴木 聡一郎 先生
松井 啓夫 先生
福井 雄大 先生
川島 俊 先生
高本 尚弘 先生
三木 健嗣 先生
東京都のX線読影者の眼力に感謝すると共に、切除手術することへの迷い

5年間陳旧性のものとして異常視されなかった陰影を「怪しい」と疑ってくれた読影者の眼力に感謝する一方で、自身の過去の制がん研究において、大きな「がん」を担いながら「がん免疫」のバランスを保ち、長生きする高齢動物を幾度となく観察している経験から、5年間いかなる症状もなく宿主と「がんもどきの異物」がバランスよく共存共栄していたものを、突然部分切除して「がん免疫」などのバランスを崩すこと(がん免疫の攪乱)が果たしてよいものか大いに迷ったが、肺に異物として存在することは確かであることから、「がん」であるなしにかかわらず異物除去を目的に切除手術することを決心した。

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